みなさん、ごきげんよう。いかがお過ごし？

わたくしは相変わらず初恋の人の姿を求めて、日本中の空き家を巡っているところよ。今日やってきたのは……。

吉井「青森県東津軽郡今別町でございます」

まあ、青森！　空き家を巡り始めてから青森に来るのは初めてじゃない？初めての場所はワクワクするわ！

吉井「今別町は自然豊かなまちで、景勝地もたくさんあるそうなんです。だるま滝、赤根沢の赤岩、今別川……今別川は津軽海峡に流れる川なのですよ」

津軽海峡……あの津軽海峡ね！

津軽海峡

吉井「そうです、あの津軽海峡でございます。また、桜の名所としても知られる海峡あすなろ公園など、まちの人たちが楽しめる場所もたくさんございます」

ここで暮らせば、そんな自然が楽しめるのね。

吉井「豊かな自然に恵まれていることもあり、一次産業が盛んなのだとか。地産地消にも力を入れているそうですよ。興味深い特産品もございますし」

例えば？

吉井「『幻の黒毛和牛』と呼ばれているいまべつ牛、一株にひとつだけ実をつけさせる一球入魂かぼちゃ、あとはいのしし肉などですね。なかでもいまべつ牛は促進協議会が存在するほどメジャーな町の特産品で、道の駅いまべつ半島プラザアクスルでも食べることができるそうですよ」

幻の黒毛和牛……ぜひ頂きたいわ！いのしし肉は食べたことがあったかしら……。クセのある食材だった気があるわ。

画像はいのしし肉のイメージです

吉井「今別町のいのしし肉は肉の臭みがまったくなく、煮込めば煮込むほど柔らかくなるのだそうです。焼肉やぼたん鍋にするといいそうですよ」

すてき！　買って帰りましょうよ！

吉井「道の駅に立ち寄ることといたしましょう。そして本日の物件でございますが、こちらは東北新幹線の奥津軽いまべつ駅から徒歩10分強の場所にございます」

すごいじゃない！　ということは、都会へのアクセスもしやすいということね。さすがに東京に通勤は難しいかもしれないけれど、週末は過ごしやすそうじゃない？

吉井「その通りでございます。拠点は都会に置いたまま、本日の空き家を別荘として利用するのもよさそうですね。今別町には、通勤・通学に北海道新幹線等を利用する場合、定期代を半額助成する制度もあるので、　自然豊かで食べ物の美味しい今別町に暮らしながら、青森市内へ通勤する、という選択肢も良いかと存じます。……さて、到着いたしました」

わりと新しく見える空き家だけれど……。

吉井「築42年ということですので、今まで奥様が見てこられた空き家の中では比較的、お若いかもしれません」

ふふふ、そういうのも最近、分かるようになってきたの！　空き家を見る目が養われているようね。でも、どうしてオーナーさんはこちらを手放そうとしているの？

吉井「前のオーナーの方が管理されている頃から空き家だったそうなのですが、都会に移住するのをきっかけに、本格的な空き家になったものを現在のオーナーが譲り受けたそうです。今までもいろいろと活用の仕方を模索していたそうですが、なかなか決まらずに空き家の期間が長くなってしまったそうですね」

もしかしたら、この物件はわたくしたちを待っていたのかもしれないわね……。あの人との再会の場所として選ばれるために。

吉井「！！　今日が運命の出会いに……！？」

可能性はあるわね。……あら？　少し屋根が壊れていない？

吉井「雪の重みで損壊している場所がいくつかあるようですね。あちらにも……」

雪が多く降る地域ならではの損壊理由ね……。

きっと、住んでいる人がいたときも力強く守ってくれていたに違いないわ。

なるほど、この辺は改築する必要がありそうね。こうなってくると中の状況も気になるわ。

吉井「鍵をお預かりしております。早速入ってみましょう」

あら、ドアが二重になっているの？

吉井「これも寒さ対策でございましょう」

ふふふ、あちこちに青森ならではの要素が隠れていて楽しいわ。次は何が飛び出してくるのかしら。

吉井「まずはこちらをチェックでございますね」

吉井「ここはいまのオーナー様が譲り受けたときからある雨漏り箇所のようです」

これも雪で屋根が損壊していることが原因しているのかしら。

吉井「その点については何とも申し上げかねますが、湿気の多い土地のようですね。オーナー様は2階押し入れのカビが目立つのことを懸念されておりました。目立った劣化は少ないようですが」

このあたりの気候や土地と仲良くなって、湿気対策も考えないといけないみたいね。でも、そういうのを考えるのは嫌いじゃないわ！

吉井「損壊している場所もあるので改修は必要ですが、和室も洋室もございますし……」

畳の部屋も、フローリングの部屋もあるの、いいわね！　使い道が広がるし。

あと、なにより広々としているわ。

吉井「二階建ての4LDKですから、家族やご夫婦で移住するのにはちょうど良い間取りですね」

4LDKは良いわね。それぞれの部屋も持てるし、夫婦ケンカしたときに逃げられる場所があるのは大切よ。

吉井「奥様も旦那様とケンカされたことがありましたね」

いやね、今よりずうっと若いころの話よ。ところで吉井、わたくしが気になるのは……。

吉井「水回りでございますね」

そうよ！　さすが吉井！

吉井「こちらになります」

まあ！　きれいじゃない！

吉井「キッチンを含め、バストイレなどの水回りは15年ほど前にリニューアルされたので、比較的きれいなんだそうです」

使い勝手も良さそうだし、なにより、リビングを見ることができるカウンターキッチンなのがいいわ！　ここで料理をしながら、家族が話しているのを眺めるの。

料理を作っているときに、キッチンが離れていると少し寂しく感じるものなのよ……。会話に参加しなくてもいい、家族の空気が感じられたら幸せなの。

吉井「リビングからもご覧になられますか？」

ええ！

こちらから見ても解放感があっていいわね！

あと残っている家具がどれも雰囲気に合っていてステキ。

フローリングに白い壁、そしてウッド調の家具……いいと思うわ！

あと、個人的にこういう作りつけの棚があるのも好きよ。リビングだからこそ、家族の思い出の品を並べたいわ！

吉井「良いですね。この配管の不具合があるかどうか不明なので、その点は懸念点となりますが、雨漏り以外は目立った劣化もございませんし……」

思い切って減築するだとか、DIYで修繕をしながら暮らすのも、それはそれで楽しいかもしれないわね。

吉井「あと、もう一点、お伝えしたいことがございまして……奥様、今一度外に出ていただけますか？」

？　なにかしら？

吉井「こちらの隣接する1,500㎡の傾斜地……地目は畑ですね。この土地と先ほどの建物がセットで100円となっております」

また、そんなお得な物件が！？　……びっくりしてつい、通販番組のようなリアクションになってしまったわ。

吉井「奥様、通販番組を見られるのですね……」

たまにね……。でもこんな広い土地がセットだなんて！

吉井「自由に使ってかまわないそうです。ただし……」

ただし？

吉井「この土地も併せてお譲りするのが必須条件で、宅地建物のみの希望はお受けできないとのことです」

うれしい必須条件ね！　こんなステキな場所を購入したらハッピーになれるに決まってるじゃない！畑で農作物を育てて、自給自足的な生活をしながら自然と共存して暮らすのも憧れだし……。

そうだわ！これだけの土地があるんだし、キャンプ場を作ったり、貸農園にしたり、空き家で暮らしながら土地を商業利用するのも良いかもしれないわね。あとはそうね……スキーやそり遊びをしたり、ミニキャンプをしたり、アウトドアが満喫できる別荘にするとか！我ながら名案だわ！

吉井「奥様、盛り上がっているところ恐縮ですが、大切なことなのでよく聞いてください。この土地は地目が”畑”なので、基本的には『譲受者が農家であること』が原則となります。ですが今別町では、隣接する宅地建物に住むことなどを条件に、特例として非農家の方も土地を引き継ぐことができる可能性がございます。現オーナー様は登記の条件を満たすことができず、隣接する畑は前オーナー様名義のままとなっているそうですが…。

ですので農家の方は問題ありませんが、もし非農家でこの物件を購入したい、活用したいという方は、上記を踏まえてオーナー様とお話をし、今別町の条件・ルールを確認しながら進めていく形になることをご承知おきいただければと思います」

なるほど。これだけの物件を思いのままにするには、一筋縄ではいかないということね。……燃えるわ。

吉井「奥様、たくましい…！！前オーナーさんはこの物件で幼少期から自然と共にのびのび育ったせいか、心がとてもおおらかで笑顔がステキな方なんだそうですよ」

あら、なんていい話なのかしら！

吉井「そして現在のオーナー様は、長く空き家になったことで家にかわいそうな思いをさせた、と感じていらっしゃるそうです。次にこの物件を引き継いでくださる方には、『ぜひこの空き家に愛を注ぎ、生まれ変わらせてあげてほしい』と」

吉井！わたくし、感銘を受けました！こうしていられないわ。この空き家をどうすれば活用できるか、どうすれば空き家を幸せにしてあげられるか、作戦会議をしましょう！

もちろん、いまべつ牛を食べながらよ！

吉井「かしこまりました、奥様。いまべつ牛を食べに道の駅に参りましょう！」

※この記事はオーナー様からいただいた情報をもとに作成しています。

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