みなさん、ごきげんよう。いかがお過ごしかしら。
近頃のわたくしは、我が家の運転手・吉井が素敵な空き家を見つけてくれるのをまだかまだかと待ち焦がれているところなの。

夫が亡くなって落ち着いたころに、ふと初恋の彼のことを思い出してね、会いたいなあ、って。その彼、空き家マニアでね、空き家を巡れば彼にまた会えるかと思って……ってこの話、もうしていたかしら。やぁね、年をとると同じことを何度も言ってしまうのよね。

吉井「そうですよ、奥様。初恋の方のお話、この吉井はもう耳にタコでございます」

あら、吉井。いたの？

吉井「先ほどから。ところで、良い空き家物件を見つけましたよ」

さすが吉井ね！　その素敵な物件はどこに？

吉井「岡山県新見市でございます。百聞は一見に如かず。さあ奥様、参りましょう。少々長旅になりますぞ！」

赤枠：岡山県新見市

吉井の運転する車に揺られてやって来たけれど緑がまぶしいわ……。心が洗わるようね！　今日はとっても良い天気だし。

吉井「岡山県新見市は、哲多富士の山がのぞめ、水も空気もとても美しい自然豊かな場所なんです。四季折々の自然の風景を楽しむことができそうですよ」

ずいぶんと詳しいのね。

吉井「下調べは完璧でございます。車を少し走らせたところには、道の駅やオーガニックカフェ、ワイナリーもございます」

新見市街地

空気が綺麗だと、きっとあの人の歌声も美しく響き渡りそうね。あの人のギターの音色はとても素敵で……。

吉井「路上で弾き語りしているお姿を見て一目惚れされたのでしょう？　そのお話も耳にタコでございます。しかし、季節によっては自然の演出も加わるかもしれません。新見市には県指定天然記念物の金ボタルの生息地・天王八幡神社があり、ホタル祭りでは無数にまたたく黄金色の光の乱舞によって、息をのむほど美しい幻想的な光景が見られるのだそうです」

まあ……。吉井、わたくし、これから行く空き家の近くにあの人がいるような気がしてきました。

吉井「だと良いのですが……さて、空き家に到着しましたよ」

まあ……！　草木に囲まれた木造住宅ね！

※➃の写真左に写っている建物は当該物件ではございません

吉井「敷地面積1000㎡となるので広々としておりますね。テニスコート5面分ぐらいかと」

あの人とテニスはなんだかミスマッチだし、わたくしもしたことがないの。でもその広さだと野外音楽会もできそうね。
……吉井、聞いてる？

吉井「聞いておりますよ、だいたいは。建物は築100年ほどになるそうですが、雨風にも負けずこうしてしっかりと建っているところを見ると、日本の昔ながらの技術のすばらしさを改めて感じざるを得ません。少し周辺も歩いてみましょう」

物件周辺図

夏も風通しが良さそうでいいわね！　周りに建物もないし。そして空が広いわ……都会は便利だけれど、空が小さいから。ここはきっと星空も美しいのでしょうね。どうしてこんなに素敵なおうちが空き家なのかしら。

吉井「昔のオーナー様が物件を譲り受けたそうですが、先々代よりも前から空き家のようですね。また、遠方のため活用が難しいとのことです」

そうなの……残念ね。
うーん、深呼吸をすると自然の香りが胸いっぱいに広がるわ。

吉井「奥様、こちらが玄関になりますのでお入りください」

ワクワクするわね！　わたくし、こういうおうちに入るのは初めてよ。なんだか映画のような雰囲気ね！

吉井「こちらがオーナーさん作成の間取り図です。和室は1階に3部屋、2階に2部屋ございますね」

広々としていていいわね。ふすまを全て開け放して使うのも良さそう。わたくしひとりでは少々広すぎるから、ご近所の方を呼んでみんなでサロンを開くのも良いかもしれないわ。今風でいうところのこぉきんぐすぺぇすというのよね。

吉井「コワーキングスペースですよ、奥様。そしてこちらが炊事場でございます」

まあまあまあまあ！　我が家のキッチンよりも広いじゃない！
おまけに釜炊きなのね！　薪をくべて炊くのでしょう？　

吉井「そうかもしれませんね。ただこのお宅、プロパンガスや上水道も引いているようですよ」

あら、そうなのね！　川や井戸から水を汲んでくるのかと思ったわ！それにしても本当に素敵……。みんなで一緒にお料理するのも楽しそうね。こういう雰囲気、大好きよ！　映画の主人公になったみたい。

吉井「では、お風呂場も楽しんでいただけるのではないでしょうか」

これって五右衛門風呂じゃない！？　お風呂もたき火で沸かすのかしら、これも映画で観たことあるの。こう、竹筒のようなものでフーッフーッと息を空気を送るのでしょう？

吉井「空き家になる前はそうだったのかもしれませんね。今はどうなのか……オーナーさんに確認しておきましょう。50年以上空き家なので改修は行わなければなりませんし、その際にライフラインは整えると良さそうですね」

そうね……。でも改修するにしても、このレトロな雰囲気は残しておきたいわ。特に炊事場なんてワクワクするもの！なんだかキャンプに来たような……

ひらめいたわ、吉井！オートキャンプ場なんて素敵じゃない？敷地も広いし、炊事場はみなさんで自由に使っていただくようにして……。和室を交流スペースにするのも楽しそう。もしくは首都圏など他のエリアにお宅がある方が、リフレッシュがてら過ごすことができる2拠点生活シェアハウスにするのはどうかしら？

吉井「奥様の想像力が冴えわたりますね。でも、まだびっくりな場所があるんですよ。こちらへどうぞ。牛小屋でございます」

牛小屋……！？　この柵の中に牛がいたってこと？　わりとたくさん飼えるんじゃなくて？

吉井「このエリアには日本最古の蔓牛をルーツとする希少ブランド牛がいるそうなので、その流れを汲むものかもしれませんね」

牛小屋があるおうちなんて、わたくしも見たことがありません！
また牛を飼って、オートキャンプ場の目玉にするのもいいかもしれませんね。乳しぼり体験をしたり……。吉井ならこの家でどんなふうに暮らしたい？　想像してみて。

吉井「私ですか？　そうですね……。ツリーハウスなどはいかがですか？空き地の廃材を使って地域の子どもたちと一緒にDIYをするのもいいでしょうし、秘密基地のようで子どもたちにも楽しんでいただけるのでは？」

※画像はツリーハウスのイメージです

素敵なアイディアね。採用よ！

吉井「ありがとうございます。ほかには納屋と倉庫もありまして」

ねえ、吉井……。空き家ってどこも牛小屋があったり、納屋や倉庫があったりするものなの？

吉井「いえ、こういった物件は稀かと」

じゃあ、すごくお高いんでしょう？　敷地面積も合計1000㎡って言っていたし。わたくしでも手が出ない金額かしら。

吉井「物件の現状確認が必須となっており、その後購入する場合は100円でございます」

ひゃく……？

吉井「はい。現状のままで引き渡しとなり、100円でございます」

わたくし、知っているのよ。今は、100円ではジュースも買えないことを。亡き夫が教えてくれたもの。

吉井「100円でございます」

改修工事が必要だけれど、100円で物件を購入できるならたっぷりと予算を確保できるということね！
ちなみに、オーナーさんにもどんなふうに使ってほしいのか希望があったりするのかしら。

吉井「オーナー様からメッセージをいただいております。『のどかな田園風景が広がるのを眺めながら、ボーっと過ごしたり、自然のなかハンモックで癒されたり、自分の好きをかなえてほしい』とのことです」

※画像はイメージです

自分の好きをかなえてほしい、良い言葉だわ！

わたくしもここで好きを叶えます。あの方とふたりで一緒にDIYをして地上の楽園を作るの。わたくしはやっぱりオートキャンプ場にチャレンジしてみたいわ。接道の問題などを確認しないと実現できるか保証はないけれど……。もし実現できたら、昼は外でアウトドアを満喫、夜は室内で彼が音楽をみなさんのために奏でる……良いアイディアだと思わない？

吉井「……大変申し上げにくいのですが、肝心のあの方がまだ見つかっておりません」

う……っ、そうだったわ……。
ここで彼が来るのを待っているか、それとも別の空き家も探しに行くか……。でも、悩むなら買えばいいと思うの。

吉井「奥様、再会への旅はまだ始まったばかりですよ」

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下記をご確認のうえ、エントリーをお願いいたします。

・50年以上空き家の廃屋のため改修必須
・プロパンガス、上水道の引き込み有（老朽化のため現状確認必須）
・電気の使用については中国電力に要問合せ
・台所、風呂、汲み取り式トイレ有（バイオトイレを置くと良いかも）
・3台分の駐車スペース有
・接道していない可能性あり
・固定資産税は年間5千円程度

※上記全ては、現状確認必須
※物件の販売額に加えて、別途、司法書士代、登記費用等が発生いたします
※購入希望者の判断で、土地家屋調査士関連費が必要な場合あり
※土地・建物は 現況渡しの 公簿取引
（ 残置物を含めた引き渡し。 都市計画区域外のため、 建物の所有に制限はかからないとのこと）
※遠方にいるため、現地での案内は難しいため各自でご確認いただく必要があります

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