「日本の食料自給率って低いじゃん？？」

突然、ケーキを頬張りながら嫁が問いかけて来る。

うどんちゃんらしからぬ真面目な質問だね、とかわしてみるも、敵（嫁）は真顔で口端にクリームをつけたまま緩めることなく次の攻撃（会話）を仕掛けてきた。

「だからさ、気候も世界情勢も不安定だし、自分たちの分は自分たちで確保出来るようにしておいたほうがいいんじゃないかなって考えたんだよね。」

うーん…それってつまりどういうことかな？といつもより苦く感じるコーヒーを啜りながら返してみる。

「ずばり、それは…まずは家庭菜園をしようって話！！」とクリーム飛ばしながら笑顔で言い放ったその瞬間、嫁の携帯がﾎﾜﾜﾜﾜｱｱｱﾝ！と鳴った。

「わ！めちゃくちゃいいよ！！北九州市の家庭菜園も出来る更地物件がワンコインだって！！見に行きながら門司港で焼きカレー食べようよーーー！！」

･･･焼きカレーもいいけど、最近、新着物件メールの着信音おかしくない？？

と、まあ着信音の事は置いておいて･･･今回の物件は、新日鐵の企業城下町として発展した北九州市の八幡東区にあるとのこと。その新日鐵関連企業の社宅跡地で、以前は建物が数戸あり借家として貸していたそうだが、高齢化などにより退去が進み、最終的に古家を全て解体したそうだ。

政令指定都市である北九州市は、福岡市に次ぐ九州地方第2位の都市であり、非都道府県庁所在地においては神奈川県川崎市に次ぐ第2位の人口を有するとのこと。ということは、なかなかの都会だな。レトロ好きにはたまらない門司港や、100億ドルの夜景とも言われる新日本三大夜景の皿倉山などの観光スポットも盛り沢山だし、遊ぶにも住むにも魅力的な街だ。

と、北九州wikiをしていたら例の如く物件近くに到着。今一度、物件メールを確認してみる。

・広々とした空き地で、裏には一部山林があり自然感いっぱい。
・眺望がよく晴れた日は爽快。
・車は進入できないがバス停も非常に近く、北九州都市高速道路大谷ランプまで車で2分、JR八幡駅まで車で8分の立地。
・新日鐵関連企業の社宅跡地だが、既に解体・廃材も処分されており綺麗な状態。

なるほど、ここは車では来られないな…。この細い坂、この道沿いにところどころあって、登ったところに住宅などもあるようだ。おそらく住人の方は、坂を下りたところに数多くある駐車場を借りて車を停めているのだろう。…お、この細い坂が物件の入口か。

後ろからゼエゼエと息を切らしながら坂道を上る、万年運動不足の妻をちらりと見遣りながら物件を目指して坂道を上る。･･･あった、ここが例のワンコイン物件だ。

うん、広い。そしてアクセスや日当たりなど条件が良く、これだけ広い土地が100円でゲット出来るのはかなりのお買得だ。バス停にも徒歩5分もかからない。だた物件前まで車が入れないことでいろいろと苦労はありそうだが…この好条件には取るに足らないデメリットにも感じる。

「うっわあああー！！これ、家庭菜園し放題じゃない？？あの入口のレトロな門を活かして、門司港にあるような建物を建てても良さそう！！」と、さっきまでここに住むのは無理だ坂道キツイ、とか文句垂れ流していた人物とは思えないくらい、土地内を走り回っている妻。

そうだねー、これだけ広いから自分たちの食料分くらいは収穫出来るかもしれないね。ただその農作業は誰がするのかなって問題はあるけど。と、火の粉が降りかからないように今からジャブを入れておく。

「えっ！？夫婦で協力して作った野菜とかめちゃくちゃ美味しいって！お魚は旦那さんが釣って来てくれるし、野菜は2人で作って･･･お米もここで作れるのかなあ？？」

なるほど･･･俺のジャブはノーダメージってことね。

まあ、採れ立ての野菜って旨いだろうし、うどんちゃんの運動不足も解消されていいかもしれないね。自然に囲まれながら都会にもアクセスしやすいこの立地は、仕事もプライベートも充実出来そうだしね。

「そうなの～！運動しようって思ってもなかなかできないけど、畑しなきゃ！って思ったら自然に動けそうだもんね。」

はしゃぐ妻の姿を見ながら、農作業という仕事がプラスされることをすでに覚悟しつつ、耕運機っていくらぐらいするのかな、なんて考えながらオーナーさんの電話番号をプッシュする旦那なのであった。

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