俺は今、和歌山県有田市宮崎町にある釣り師の聖域（サンクチュアリ）・逢井（おうい）漁港に来ている。逢井漁港は漁港への道が分かりにくく、一部の釣り師しか知らない穴場的なスポットなのだ。

当然の如く、魚が逃げてしまう位うるさ･･･いや、賑やかな妻・うどんは置いてきた。起きてLINEを見たら鬼TEL＆鬼LINEがくるんだろうなあ…。今のうちに電源オフにしておこうかな。

この辺りは県外から来た人向けの施設やお店はなく、小さな民宿などはいくつかあるが、釣り道具はかさばるので車中泊で来ている。この漁港の近くに住めたら楽だし毎日釣り三昧で大漁に継ぐ大漁なんだけどなあ…。などとボヤきながら釣り糸を垂らすと、電源をオフし忘れた携帯がﾁﾝﾁﾛﾘｰﾝと鳴る。この音は新着物件メールだ。

片手に竿を持ちながら確認すると……ん？逢井漁港近くの物件？？なんてタイムリーなんだ…！！概要をサッと確認するや否や、垂らしたばかりの釣竿を素早く片付けた俺は、徒歩でその物件へと向かうことにした。

有田市は和歌山県中部に位置する市で、言わずと知れた有田みかん発祥の地。そして蚊取り線香発祥の地でもあるそうだ。有田市を本拠地とする社会人野球のクラブチームは、全日本クラブ野球選手権大会を4度制している強豪らしい。そういやここ宮崎町にホームグラウンドがあるな。

と、妻に倣って有田市ウィキしながら物件へと続く坂道を登っていくと…到着。ここだな。

海から近いがこれだけ高台にあれば津波の心配もなさそうだ。

そして改めて新着物件メールで概要を確認。平屋の3Kか。大き過ぎず狭すぎずで丁度いい。雨漏りなどはなく、トイレと玄関ドアのリフォームは必須か。キッチンや風呂はリフォーム推奨、と。まあとりあえず実際に見てみよう。

さっそくそのリフォーム必須の玄関ドアを開けて「失礼します･･･」と中へ。

土間の廊下が家の奥まで伸びている。うん、釣り帰りでもそのままキッチンやバスルームに行ける造りは有難い。

土間廊下から靴を脱いで部屋も拝見。雨戸が閉まっているせいで暗いが、開けたらきっと有田の晴天で最高な採光になるはずだ。･･･言っておくが、ダジャレとか某面白物件紹介youtuberを真似したわけではない。

キッチンも使いやすそうな程よい大きさ。ここも窓の添え木を外せばいい光が入ってきそうだ。

バスルームもリフォーム推奨とあったが、掃除をしたらすぐ使えそうな状態ではある。他をリフォームして余力があれば妻好みにするのもいいかもしれない。

物置は…なかなか年季が入っていてリノベーションも難しそうだが、釣り道具を仕舞うくらいだったら使えなくもなさそうだ。

車中泊やキャンプで釣りをするのも悪くはないが、この穴場スポットに拠点を構えるチャンスを逃すわけにはいかないな。実際に内見してみて条件も悪くはないし、うどんも海チカで大好きな有田みかん食べ放題のこの環境には賛成すること間違いなしだろう。

という事で、オーナーさんへ購入希望の連絡を入れる。どうやらこの家はオーナーさんのおばあさまが住まれていた家だったそうだ。きっといろんな想い出もあるんだろうな･･･。俺もおばあちゃん子のはしくれ。大切に使わせてもらおう。

しんみりと祖母との想い出に浸りつつ物件を眺めていると、妻・うどんからの電話がけたたましく鳴る。

「お疲れ！！もうマグロ釣れた？？？」

※こちらの物件は司法書士指定。登録免許税、郵送費などの諸費用込みで約15万円がかかるのでご注意ください。

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